なんでもシステム管理者(日本酒大好き!)

システム管理者兼何でも屋をやってます!日本酒にはこだわりを持ってます。多趣味ですが、その時間がなかなか取れないという悩みが・・・

日本酒の種類 その参

「日本酒の種類 その弐」からの続きです。

 「その壱」と「その弐」では基本的に酒税法による区別という観点から書きましたが、今回は「造り方」という観点から書いてみたいと思います。

 日本酒の造り方には、「生酛(きもと)造り」、「山廃(やまはい)造り」、「速醸(そくじょう)造り」があります。

 まず「生酛造り」ですが、この方法が昔ながらの伝統的な造り方です。日本酒を仕込むタンクは蔵見学をされたことがある方はご存知かと思いますが、上側が空いた形になっています。

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そのため、雑菌や野生酵母が混入しやすいのです。そんな混入してくる雑菌や野生酵母をやっつけてくれるのが「乳酸」なんですが、人工的な「乳酸」を加えるのではなく、蔵や自然の中にいる天然の乳酸菌を使用するのが「生酛造り」になります。天然というとなんとなくイメージがいいのですが、実は造り手にとっては厄介なところがあります。天然であるがゆえに、人工的なものに比べると不安定で、時には雑菌などをやっつけきれずに、腐造してしまうということも起こりやすいようです。また後述する「速醸造り」よりも醸造期間が長くかかるということもあります。

 次に「山廃造り」ですが、簡単に言うと「生酛造り」の工程から、櫂(かい)を使って、蒸した米、麹、水をかきまぜ粥状になるまですりつぶすという「山卸(やまおろし)」という工程を廃止した造り方になります。「山卸」を廃止したので「山廃」と言います。実際の造り方としては単純に山卸をなくすと言う単純な物ではなく、山廃には山廃の造り方の調整があるようです。正直なところ、この辺りの微妙なニュアンスは自分が蔵人にでもならない限り体感できないかと思います。

 「生酛造り」と「山廃造り」を合わせて「生酛系」と総称する場合があります。

 最後に「速醸造り」ですが、「生酛系」と異なり、「醸造用乳酸」を意図的に添加する造り方です。終戦後、酒蔵に限らず日本全国的に決して良くはなかった衛生環境の中で、安全に確実に日本酒を醸造する手段として普及した手法のようです。以前紹介させていただいた「純米酒を極める」の著者である上原浩先生も戦後間もなくは、確実に日本酒を造るために「速醸造り」の普及を勧められたそうです。その後、「戦後」を抜けだして、衛生環境が整い、よりいい酒を目指すことが許される社会背景になってからは、上原先生も「生酛造り」を勧められていったようです。

 この「速醸造り」で使用される乳酸なのですが、天然由来の物と石油原料を(なんと!)青酸カリを触媒として生成される合成乳酸の2種類があるようなんです。合成乳酸はもちろん体に悪影響があるとのことでWHOで使用が禁止されているようなのですが、日本酒では子供は飲まないし、ごく微量だからということで使われているそうです。もちろん旨い酒を醸す心ある蔵では使われていないと思いますが、原材料表示に載っていないので通常は確認しようがありません。(今度どこかの蔵にいったら聞いてみようかなぁ・・・)
ちなみに「醸造用乳酸」についてはアキモト酒店さんのブログに詳しく載っています。

 「生酛系」の特徴としては、良く言えば「味がある」、「濃厚」、悪く言うと「重い」、「くせが強い」という感じで、その傾向は私個人の体験と主観から「生酛」>「山廃」という感じになります。
 一方、「速醸」では、良い点は「きれい」、「飲みやすい」、悪く言うと「軽い」、「薄ぺったい」という感じかと思います。 どちらも一長一短あるかと思いますし、また例外的なお酒もあるかと思います。「生酛系」の短所として「くせが強い」と書きましたが、実はこの短所は長所に化けることがあるのを最近、時々体感しています。それは「燗」をつけるということです。通常、劣化しないようにお酒は冷蔵庫で保管しています。(野菜入れをかなりの割合で占拠・・・・(^_^;)ですので、つい、そのまま冷酒で飲むことが多いのですが「生酛系」、特に「生酛造り」のお酒は「燗」が冴えるように思います。一口に「燗」といっても様々な温度帯があり、それぞれのお酒によってピッタンコに合う温度があるようです。

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本当は湯せんで温度計で計りながら「燗」すればいいのですが、横着なもんでなかなか・・・テーブルの上にセッティングできて簡単に温度調節ができるような装置?があればいいのになぁ・・・(時間ができたら造ってみたい!!DIYは得意な方ですし、電気系は強いです(^_^)
まぁ、お手軽な「燗」ですと、電子レンジになるのですが、ここで軽くひと手間かけます。
・徳利の上にアルミ箔でフタをする
 または
・徳利を2つ用意し、チンした後、もう一つの徳利に移す
なぜ、こんな事をするかと言うと全体の温度差をなくすためなんです。一つ目の方法は「マルタカさん」に教えてもらい、2つ目の方法は神亀酒造の1升瓶についていた紙に書いてありました。

 

 余談(コラム?)

 昨晩寝る前にちょっと読んだdancyu合本「日本酒」の冒頭記事を紹介したいので少し書きます。

 冒頭記事では「新政」の佐藤祐輔さんの考えが書かれてありました。「新政」では秋田県酒米のみ使用して全量純米で製造されているのですが、それだけではなく速醸も止められているのです。なぜかというと「新政」では「地酒」の意味にこだわりを持たれているからなんです。いくら兵庫県山田錦酒米として優れていても、はるかかなたの秋田まで取り寄せて酒を造って、それを『地酒』と呼べるのか??ということなんですね。そんな『地酒』のこだわりから酒米秋田県産に限定されているのですが、速醸造りには乳酸を使用します。その乳酸はどこで造られたものなのか?ということなんですね。「速醸造り」が近代になって開発されるまでは意図的に乳酸を足すのではなく、蔵に自然にいる乳酸の助けを借りていました。いわゆる「生酛造り」や「山廃造り」です。いやぁ~素晴らしいこだわりです。なかなか考えがそこまで及ぶことはあっても、実際にそこまで実行できる蔵はそうそうないのではないでしょうか?さらにうれしい事に、「新政」では一般に難しいとされている山廃を含む生酛系の技術を自分たちだけでなく、他の蔵でも使えるような形していきたいという素晴らしい考えをお持ちなんです(^_^)

 ちなみに、というか当然ですが私は「新政」大好きです。「六號」も「No.6」も「佐藤卵兵衛」も「クリムゾンラベル」も・・・今晩は「ヴィリジアンラベル」をいただきましたそのお味は・・・いうまでもありません。(^_^)

「日本酒の種類 その四」に続く・・・