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なんでもシステム管理者(日本酒大好き!)

中小企業でシステム管理者兼何でも屋をやってます!日本酒にはこだわりを持ってます。多趣味ですが、その時間がなかなか取れないという悩みが・・・

久々の渓で イワナと日本酒!!

 この日は数年ぶりに長良川のとある支流の渓(たに)に降り立った。ここは、道路からのアプローチが分かりにくいため、ほとんど知られていないとっておきの釣り場だ。

 ここ数年、仕事が忙しく渓流釣りに行く時間が取れなかったのだが、ある日いても経ってもおれなくなり、平日の夜の帰宅後にフライを巻いて準備した。この2、3年で老眼が進んだのと、ほとんどタイイング(フライを巻くこと)をしていなかったので、相当腕が落ちていて、苦労したが、お気に入りのドライフライを数種類、それぞれ3つのサイズを何とか巻きあげた。これだけあれば、1日の釣行には充分だろう。

 車を道路わきに停めて、ウェーダー、ウェーディングシューズを履く、そしてフィッシングジャケットを羽織り、帽子をかぶり偏光サングラスをかけると、自分でも「釣り人モード」に入って行くことが感じられた。竿をついでリールをセットし、草をかき分けて、渓に向かう。久々の渓は変わっていないだろうか?不安と期待に包まれながら、進んでいくと渓のせせらぎが聞こえてきた。

「ああっ、帰ってきた、この渓に!!」鏡はないが、自分の顔がほころんでいるのが良く分かる。そして川原に出ると、以前と変わらぬ美しい流れが見えた。

「パシャッ!」少し上流のほうで早速ライズがあった。ここは源流域なので、まずイワナだろう。

ここは他の釣り人が入る心配がほとんどないので、ゆっくりとフライをセットする。久々のフライフィッシングなので、しっかりと水面に浮いて良く見えるパラシュートタイプで、ちょっと大きめのものをチョイスした。通常、大きすぎると魚が警戒して釣れないものだが、この渓のイワナ達はおおらか?なので、きっとこのフライでもライズしてくれるだろう。

 まだ、竿を振る前から、大きめのイワナは塩焼きにして、小さ目はしっかりと焼いて骨酒にしよう・・・などと皮算用が頭の中をよぎる。

 先ほどライズしたポイントのやや上流を狙って、渓がせまいので、木にひっかけないように注意して第1投。

 竿を振るのも久しぶりだが、ほぼ狙い通りにフライは着水。フライは良く見えている。そして、ライズしたポイントに差しかかると

「パシャッ!」

出てくれた、すかさず反射的に竿を立てるとイワナの重みと逃れようとして暴れる力が、ブルブルと伝わってくる!!久々に味わうこの感触!!「これだ、この感触!!」思わずひとり言を言ってしまう。

 力強くてなかなか、引き寄せられない。イワナの引きを味わいながら、その姿を見ると尺はゆうにありそうだ。いままで釣った中でも一番のサイズかもしれない。おそらく十分以上格闘していたかと思う。やっとのことで、ネットに収まってくれた。

 岸にあげてメジャーで計ると、38cm。自己最高記録だ。竿を横に置いて、記念撮影。大きめのビニール袋に水をたっぷりといれて、そこにイワナを入れ、口を縛る。背中のバッグに収まっていただいた。「キャッチ&リリース」を推奨する人もいるが、このイワナ君は、今晩の大事な肴になっていただく。

 釣り上がること、約30分。この渓一番のポイントに到着した。コバルトブルーの淵が、ここから10mほど続く。この淵はイワナの巣というぐらい、多くのイワナがいて今までもいい思いをさせてもらっている。慎重にやれば、このポイントだけで3匹は釣れる。

 まずは淵からの流れだしに狙いを定めてフライを流す。ライズが出たが、チビイワナで口の使い方がまだへたくそでフライにかからない。続いてもう一投、着水とほぼ同時にライズ!!ややあわてながら竿を立てるとなんとかフッキングした。上流にいる他のイワナを驚かせないように静かに引き寄せる。約20cmのイワナだ。こいつは骨酒だな、と早くも晩酌に思いが飛ぶ。獲物を手にしながらニヤニヤしてると、なんだか後の方から誰かに見られているような気がした。もちろん、こんなところに人がいるわけがない。恐る恐る後ろを振り返ると、・・・
なんと、子ダヌキが一匹こっちをじいっと見ている。お化けやもののけではなかったので、ほっとした。「フウッ」と口から空気がもれる。子ダヌキは、まだじっとこちらを、なにやら物欲しげに見ているような気がする。そうか、イワナが欲しいのか!でも今釣ったイワナはもう骨酒用に行き先が決定している。そこで、子ダヌキにそおっと小さい声で言ってやった。「今、もう一匹釣ってやるから、ちょっと待っとき!」すると、言葉が通じたのか、子ダヌキがほほ笑んだような気がした。
 2,3歩上流に移動し、沈み岩を狙ってキャスティング。一投目、岩のしたの方で動きが見えたが、水面までは出てくれない。2投目、反応なし。イワナ君、びびっちゃったかな?こういう時はがむしゃらに投げるよりは、少し時間を置いた方がいい。岩に腰かけて、背中のリュックから、お茶とおにぎりを出して川辺りの朝食とする。おにぎりを一つ食べ終えたところで、後ろでガサガサっと音がする。振り返ると子ダヌキが、少し近寄ってきている。さも、早く釣ってくれよと、せかしているかのようだ。「分かったよ。」と水筒をしまい、竿を持つ。そして慎重に再度、沈み岩を狙ってキャスティング、岩の1mほど上流にフワリと着水し、自然な感じで流れていく。岩のすぐ前辺りで、ライズ!!さきほどビビったイワナ君も旨そうなエサ(ニセモンでごめん!)に我慢できず、出てきたようだ。しっかりとフッキングして、引き寄せるが意外とデカい。少しづつ寄せていると、後ろから近寄ってくる気配がする。我慢できなくなった子ダヌキだろう。無事、ネットにイワナを納め、振り返るとやはり近づいていた。
今日の一匹目ほどではないが、けっこうデカい。タヌキにあげるには少々惜しいが、約束は約束だ。フックを外し、岸にイワナを置いてやった。すると、子ダヌキは恐る恐る近づき、イワナをパクッと加えると藪の中に消えて行った。

 さて、また釣り上がるとするかと、上流に向かおうとすると、また背後で音がした。振り返るとさっきの子ダヌキとその横にもう一匹タヌキがいる。親ダヌキだろうか?「ん??」親ダヌキらしいタヌキは何やら怪我をしているようだ。そうか、怪我をした親ダヌキのためにエサ取りにがんばっている子ダヌキがたまたま、釣りに来た自分と出会ったという訳か。
 そう想像していると親子ダヌキがペコリとおじぎをしたかと思うと姿が消えた。なんだか、化かされたような気がしたが、昔話にあるような驚かされた感じではなく、なんだか微笑ましい物を感じた。「親孝行しろよ!」と言い残して、また川に向かう。親孝行と言えば、人いや、タヌキに言ったはいいが自分はどうだろう?実家を離れて、ここのところ、年末年始しか帰省していないし、病気になって心配をかけたりしている。いい年こいてタヌキに偉そうなことを言えた身分ではないなぁ。そうだ、今日は後、数匹釣れたら、早めに川を上がって、実家にイワナを送ろう。そう心に決めて、この淵、最高のポイントにかかった。川の中を見ると、上流を向いているイワナの姿が見える。上流から流れてくるエサを待っている。
一番の獲物を見ながら「では、まず君は親父の分です。よろしくお願いします。」と小声で呟きながら、キャスティング。フライが流れて行き、それをめがけてイワナが水面に向かう姿が見える。
ゆっくりとフライを加えた姿を確認し、竿を立てると「ズシッ!!」と力を感じる。これは、今日の一匹目よりもデカい。糸が切れないよう、無理せずイワナの引きが弱まってくるまで、慎重に竿をさばいて、なんとかネットに無事大イワナを納めることができた。計ってみると、なんと43cm。今日2回も自己記録を更新してしまった。

 今日は久々の釣行だが、とても充実している。時間はまだまだあるし、いいポイントもこの先たくさんある。でも今日はもう上がろう。充分楽しめたし、自分用の今日の酒の肴と実家に送る分は確保できた。何よりも大イワナとの格闘で疲れた。ただし疲れたと言っても、心地よい疲れだ。幼かった頃に遊び疲れて眠っていたような感じの心地よい疲れだ。

 渓から上がり車に戻り、愛妻に電話をして「今から帰るから」と告げると、「まだ時間早いやん、怪我でもしたん??」と心配された。まぁ、いままで釣りに行って、こんなに早く上がったことは無かったので心配するのも無理はない。不思議がる愛妻に「今日は充分釣れたから。」と説明した。愛妻が電話の向こうで首を傾げているのが目に浮かぶ。

 今日もっと頑張ったらもっと釣れたのは間違いない。でも、それを今日食べきることはできない。冷凍にしておくという手もあるが、やはり釣りたてを食べたい。せっかくいただくのだから、やはり最高の状態でいただきたい。そんな気持ちもあった。

 帰り道にクール便で、今日一番の大イワナを実家に送った。そして、無事、愛妻の待つ家に着き、その晩は1匹目のイワナを塩焼きにして、2匹目をしっかり目に素焼きして「神亀」の純米を熱燗にして骨酒にしていただきました。イワナの出汁が最高に効いてバツグンでした。38cmのイワナもおいしくて、二人でアッと言う間に平らげてしまいました。

 その夜は、夢に子ダヌキと母ダヌキが出てきて、御礼を言ってくれました。そして釣りの秘訣を教えてくれました。目が覚めると、肝心の秘訣は覚えていなかったのですが、こんど釣りにいってもなんだかいい釣りができる予感がしました。

 

後書き

 読んでいて、なんだかいつものブログと違う?と感じられたかと思います。それもそのはず、今回はまったくの作り話なんです。酒友で人生の大先輩のTさんから釣りに行ったとメールをいただいて、それに触発されて、ちょっと想像の釣行をしてみました。こんな釣り、一度でもいいからしてみたいなぁ。
 ちなみに昔良く釣りに行っていた頃読んでいた「フライの雑誌」に釣りをモチーフにした短編小説が載っていたのですが、その雰囲気をイメージして書いてみました(^_^;
ご存知の方には、全然違う!!とお叱りを受けるかも知れませんが・・・。