「前編」からの続き
今、目の前に農口杜氏のお酒があります。しかも二種類!!
まずは、普段飲まない本醸造から頂くことにしました。スペック的には吟醸でもなく大吟醸でもなく、本醸造です。このスペックのお酒はほぼ購入したことがありません。(※2)しかし、今回は農口杜氏のお酒と言う事から購入に至りました。
※2 例外として購入したのは「射美の吟撰」です。
そして、いざ開栓すると「ポン!」と元気な音がしました。そして口に含むと、そこにあったのは驚きでした。美味い!アル添特有の棘(トゲ)など微塵も感じられません。おそらくブラインドで飲んでいたら醸造用アルコールの存在に気がつかなかったかもしれません。仕入れた醸造用アルコールを一年寝かせると味が良くなると聞いたことがあり、実際その手法で醸されたお酒を飲んで実感しています。しかしこの蔵は、まだ一年目ですので、そんな時間はないはずです。また、ある蔵の方から醸造用アルコールにもランクがあると聞いた事があります。すると、かなり上物の醸造用アルコールを使ったのでしょうか?いや、そんな単純な事ではないしょう。やはり農口杜氏の腕によるところが大きいように思えます。あるいは原料が廃糖蜜の醸造用アルコールではなく米焼酎を使われているのでしょうか?
さらにじっくりと味わうと、無濾過生原酒ならではのフレッシュさと濃醇な味わいが私を恍惚とさせてくれました。おそらく、この瞬間私はニンマリとしていたでしょう。このお酒のバランスは非常に優れていると思います。何か突出した要素はありません。GEMbyMOTOの麻里絵さんの例えではバランスのいいお酒は円錐形の形をしている(※)とありましたが、このお酒は円錐形の先が尖っておらず、丁寧に面取りされている感じなんです。かと言ってボテッと丸い訳ではなく、滑らかな書き味を持つ上質のボールペンの先のような感じです。
※こちら ↓ にそのエピソードが載っています。
どなたかのブログで一升瓶で¥3000は本醸造にしては高いな・・と書かれているのを見かけて私もそう思っていました。しかし、この味わいなら¥3000は充分納得のいく価格設定かと思います(^_^)
初めは冷酒でいただき、翌日は燗でいただきました。すると、冷酒では感じられなかった「酸の利き」が楽しめました。
食べ物との相性は、おでん、ブリの刺身、スルメなどと合わせましたがどれも良い。そして意外かも知れませんが、餃子とも合いました。普通は餃子と日本酒のマリアージュってなかなか無いように思われるかも知れませんが、芯のしっかりしたお酒だと結構いけるんです。これは、他のお酒でも経験済みです。ぜひお試しください。
そして、次に山廃純米を開栓します。本醸造と同様「ポン!」と元気な音がしました。そして口に含みます。昔味わった「菊姫の山廃純米」をイメージしていたのですが、この「農口五彩の山廃純米」はまた異なるものでした。決して軽いタイプのお酒ではないのですが、山廃によくある「重い!」感じがないんです。しかし、軽い訳でもなく味はしっかりとあるんです。以前ある場組で蔵元が「山廃が重くなるのは造りが悪いんです!」という内容のことを言われていたことを思い出しました。と言うことは、この「山廃純米」はまさしく、上手く(旨く)醸された山廃造りのお手本かと思えます。
先に書いたように昔、農口杜氏の菊姫の山廃純米をいただいて感銘を受けたのですが、80歳を超えられて、当時の技術を維持しているどころか、さらに進化されている。素晴らしいことだと思います。
そして、開栓してから四日後、また驚きがありました。開栓直後も決して硬い感じは無かったのですが、この日、口に含んだ瞬間に感じました。「旨い!」穏やかだが深みが増しています。薄めの翠(みどり)と言うか深い青と言ったイメージです。川の上流の清流部に行くと水の色は果てしなく透明に近くなっていきます。しかし、果てしなく透明なはずの水の色が、深い淵では何故か言いようもない深い綺麗な青色に見えます。この日の山廃純米が、それでした。いやぁ、旨い。この旨さは呑まないと分からないでしょう。少なくとも私にはこの味わいを表現する力はありません。興味を持たれた方は是非、自らの「舌」で、「鼻」で、「喉」で味わってください。その際には開栓直後のフレッシュさを味わうのも良いのですが、飲み切らずに四日間置いて、改めてご賞味ください。
「農口五彩」は全部で5種類のお酒が出されるようです。後のお酒が楽しみです(^_^)
農口尚彦研究所/本醸造無濾過生原酒1800ml/生酒
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農口尚彦研究所/山廃純米無濾過生原酒1800ml/生酒
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